
突入電流(ラッシュ電流)のある回路の保護
電動機やコンデンサを含む回路の場合、電源投入時に流れる電流(以下、ラッシュ電流)は、定常電流の数倍~十数倍になります。
また、突入電流は高周波成分を含むため、ヒューズ素子表面に集中して流れ、ラッシュ電流のI2t値<ヒューズのI2t値値が成り立っていても、ラッシュ電流の通過が繰り返されることで溶断に至ることもあります。
よって、突入電流がある回路では、入ってくる突入電流の大きさと耐久回数を考慮した係数でディレーティングしてヒューズを使用する必要があります。
選定方法
まず、使用するヒューズに入る突入電流のジュール積分値を、近似する波形から算出します(参照:算出式)。
その値が関係式(1)を満足していればご使用上問題ありません。
[突入電流のI2t]/[ラッシュ耐量係数 (図1)]<[ヒューズ溶断のI2t] ・・・ 式(1)
図1 ラッシュ耐量係数
選定例
表1および図2に示すモータ回路について以下条件である場合のBL32及びSBL32ヒューズの適用性を考えてみます。
このモータの起動電流が図3に示すような場合のI2t-t特性を、図4に示します。
表1
発生する突入電流 | モータの起動電流 | モータの特性曲線 |
耐突入回数 | 1000回 | 図3、図4 |

図2 モータ回路


●BL32ヒューズの場合
図4よりI2t-t特性がモータの起動電流のI2t=24より下に位置し、1回のモータ起動で溶断してしまうため適用できません。
●SBL32ヒューズの場合
図4よりモータの起動電流のI2t=24でのI2tは、SBL32のI2t=80(A2・s)となっています。図1から突入電流回数1000でのラッシュ耐量係数の値は0.41となっているため、これを式(1)に当てはめると
0.41×80(A2・s)=32(A2・S)>24(A2・s)
となります。したがって、この突入電流に対してSBL32ヒューズが適用できます。